革新的設計生産技術とは

Innovative Design/Mamufacturing Technologies -SIP 革新的設計生産技術-

「デライトものづくり」で日本を再興

本研究開発は「総合科学技術・イノベーション会議」が、「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」に選定した11課題のうちの一つで、「デライトものづくり」を実現する技術や仕組みを開発することで、わが国の産業を活性化し、競争力のある高付加価値な製品や新市場を創出することを目標としたものです。

平成28年11月現在、こうした考えのもと、「超上流デライト設計手法」の研究開発及び「革新的生産製造技術」の研究開発とそれらの実践、普及のために、27件の研究開発が実施されています。

本プログラムの背景

我が国では、高品質・高性能な材料・部品や製造プロセス技術、さらにはそれらを支える工作機械等の加工技術などにおいて高い国際競争力を発揮し、ものづくり産業が国内雇用や貿易立国を支える基幹産業として発展してきました。しかし近年、国際競争の激化による製造現場の海外流出や新興国の躍進、さらには製品のコモディティ化などの要因を背景に、1982年から2008年までの27年間連続で維持していた工作機械生産額世界トップからの陥落や、世界市場で5割以上のシェアを誇った半導体産業の低迷など、我が国のものづくり産業の国際競争力が失われつつあるとの懸念があります。
現状の我が国のものづくり産業では、材料・部品や工作機械等については依然高い技術力を維持していますが、より多くの利益が得られる最終製品やサービスの市場では苦戦を強いられています。また、我が国の強みである、部品の製造に見られるような多様なニーズに対応したきめ細かなものづくりも、近年新興国の追い上げが激しく、危機感が募りつつあります。

本プログラムの目標

苦戦要因の一つとして、ものづくりにおける川上領域(材料、部品等)と川下領域(製品・システム・サービス等)とのコミュニケーションが不十分であることが考えられます。これは、設計・製造における価値設計、デザイン、発想等の領域と生産・製造という領域の間においても同様のことが言えます。「モノやサービスを利用することによって生まれる新たな価値を想定した上で、何を作るべきか」という視点に立ち、ものづくりプロセスの各領域が上手く連携した取組が十分ではなく、その強化が必要であります。

そこで、本プログラムでは、
日本のものづくり産業競争力強化(グローバルトップを獲得)
新たなものづくりスタイルを広く普及と展開すること(地域発のイノベーション実現)
を目標に、日本のものづくりが今後強化すべき領域として、感性や潜在価値を含めたものづくりと従来のものづくりの強みである性能・品質を更に向上させる複雑・迅速造形、高性能・新機能によって実現するデライトものづくりに取り組んで行きます。(図1)

(図1)デライトものづくりの考え方
(図1)デライトものづくりの考え方

また、本プログラムでは、新たなものづくり技術を確立し、それにより以下の技術的・産業的・社会的なアウトカム目標を達成することを目指します。

技術的目標
何をどう作り販売するかも含め、高付加価値な新しいものづくり技術を確立することを目標とします。なお、様々な地域において先端的に実証することで、新たな課題や価値を抽出し改良を行うなど、効果的な研究開発を行います。
産業的目標
新たなものづくり技術の確立により、グローバルトップを獲得できる新市場の創出を目指すとともに、開発された技術の持続的な利用促進を目指したプラットフォームを構築することを目標とします。
社会的目標
地域の企業・大学・公的研究開発機関 等の優れた技術を実用化に繋げることで新たな価値創造を加速し、日本の産業競争力を強化し、かつ地域活性化(雇用創出等)に資することを目標とします。

「デライトものづくり」の実現に向けて

革新的設計生産技術では、「デライトものづくり」の「感性」「潜在価値」「複雑・迅速造形」「高性能・新機能」に集中的に取り組んで行きます。

ここで
「感性」とは、付加価値としての感性を数値化し、製品の設計パラメータに取り込むことで、迅速な感性設計を実現すること。
「潜在価値」とは、新たな試作品(形状や機能等)の提示や脳・生体情報の観測等によりユーザ(消費者)の潜在ニーズをとらえること。
「複雑・迅速造形」とは、特定な材料または部品を組み合わせて製造していた複雑な形状を、多様な材料で、一体で造形できるようにすること。
「高機能・新機能」とは、従来技術の延長では不可能であった高性能・新機能を実現すること。
を表しています。(表1)

表1 革新的設計生産技術で取り組む4つの項目
表1 革新的設計生産技術で取り組む4つの項目

これらの成果が広く利用されるように、特に研究開発成果の「ツール化」と「拠点による活用」に注力して本プログラムを進めていきます。

図2 研究開発成果の「ツール化」と「拠点による活用」
図2 研究開発成果の「ツール化」と「拠点による活用」

開発ツールは実用化・事業化の形態を2つに定め、それぞれの形態に合った進め方をしていきます。

2つの形態はそれぞれ

拠点活用型
研究開発期間内に開発ツールを広く企業に利用して頂き、課題を素早く抽出し、研究開発にフィードバックすることにより、実用化します。
販売サービス型
開発技術をソフトウェア販売、装置販売が可能な段階まで行い、それらの販売によって、広く日本の企業に利用して頂きます。

となっています。
これにより、基礎研究から実用化・事業化までを見据えて一気通貫で研究開発を推進することを目指します。

また、拠点の活用では、ユーザ視点からの技術活用について検討し、企業や他省庁の取組との連携の仕組みの構築を目指します。
この連携の仕組みは府省連携による分野横断的な取組を推進することにつながります。

イノベーションスタイルの実証・実践に向けて

イノベーションを実現するためには、ユーザ参加型の新しいイノベーションを実現する仕組み、「イノベーションスタイル」が必要です。これは、研究開発成果を実際のものづくりへ適用し、研究開発成果を使用した企業や個人ユーザの意見を得て新たな問題点を洗い出し、研究開発に迅速にフィードバックする、一連の試行錯誤を繰り返す仕組みです。これにより、“よりよい成果へブラッシュアップする”、“当初、潜在的で気づかなかったより高付加価値なニーズの発掘を行う”といったことが可能となります。
研究開発の実施に当たっては、技術を開発するのみならず、さまざまな「イノベーションスタイル」を試行し、革新技術と組織連携の相乗効果としてのイノベーションが生じるメカニズムを実証、実践します。
「イノベーションスタイル」には、研究分野に関連する地域内、または、地域間における多様なプレーヤーの連携として

異分野・顧客価値探索型
大学・中小企業・公設試が一体となって、技術、得意分野を持ち寄り製品開発を行う
同分野・顧客価値探索型
企業コンソーシアムを組み大学の技術紹介、技術移転を公設試等がバックアップする
異分野・価値実証型
大学、研究法人を介して連携が進み、実用化に向け一連のシステム開発を促進する
同分野・価値実証型
大学と複数企業が共同研究を行い課題解決に向けて取り組む

などを例に、さまざまなスタイルがあり得ます。
さらに、研究開発を進め、その成果を具体的に実用化、事業化し、国内外の市場に展開していくまでの全体のストーリーの検討も、あわせて行います。これにより、新たな「イノベーションスタイル」のモデルや仕組みを構築し、幅広く他の分野や地域へ横展開していくことを目指します。

図3 「イノベーションスタイル」のイメージ
図3 「イノベーションスタイル」のイメージ